天使の梯子

「俺が悪いんだ。仕事が忙しいからって、楓の優しさに甘えきってた」


そんなことない、あの子は忙しいお前のことを本当に心配していた。


思いもよらない事態に、よろめいた俺の背中に壁がぶつかる。


そんな俺を見て、暎仁が自嘲的な笑みを浮かべた。


「当直、やるから。やらせてくれ。仕事してないと、楓のことばかり考えて頭がおかしくなりそうだ」


苦しげに声を絞り出した暎仁を見ていられなくて、視線を逸らす。


俺の、せいだ。俺が、二人の仲を引き裂いた。


そう思ったら情けないことに足が震えた。


俺は、こんな暎仁を見たかったんだろうか。こんな結末を望んでいたのだろうか。


楓ちゃんを傷つけて、暎仁を傷つけて、俺は……。


俺の望んだ暎仁の姿を見ても、心は晴れなかった。


俺は、なんていうことしてしまったんだろう。


取り返しのつかない事態に、激しい後悔の念と、罪悪感が押し寄せてくる。


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