天使の梯子

暎仁には、真実を伝えられなかった。


怖くて、どうしようもなく怖くて、ずるい俺はそれを自分の中の奥深くに鍵をかけて閉じ込めた。


それから暎仁は、ゆっくり、ゆっくり……時間をかけて立ち直っているように見えた。


だけど俺は知っている。暎仁が、ずっと楓ちゃんのことを想っていることを。


四年の間、暎仁は他の女を一切受け入れなかったから。


その間に、俺には結婚したいと思うほど、大切に想う相手ができた。それに、ますます罪悪感は強くなった。


この人を俺の手で幸せにしたい。


だけど、暎仁の幸せを壊した俺が幸せになる権利はないと、俺はプロポーズに踏み切れずにいた。


それで振られてもしょうがない。これは俺の罰なんだと思った。


それなのに彼女の手を離すこともできない自分と、図々しく暎仁の親友の座に座っている自分に、俺は辟易した。


そして、運命の日は唐突にやってきた。


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