天使の梯子

「いや、というか急患。ていうかそれ、楓ちゃんの?」


術位も脱ぎ捨てて、上半身裸の暎仁が持ってきた女物のバッグ指差してそう聞くと暎仁はうなずく。


「そう、逃げられると困るから。急患は初期対応がよかったから、レベル戻ってるし。入院の指示して処方も書いてきたけど? なんか文句ある?」


文句……あるわ!あるけど、そっか……楓ちゃん、暎仁のところに戻ってきたんだ。


なんかすごいな、このふたり。こういうのを、運命っていうのかな。


「わかったよ。当直引き受けるから帰れ」


「悪いな。もう一回、あの急患の様子を見てから帰るから」


俺の答えに暎仁は満足そうに笑って、部屋を出ていく。こんなときでも患者を気にする辺りはさすがだな。


にしても、暎仁のあんな顔……久しぶりに見たな。そう思いながら、俺も部屋を出る。


俺も、楓ちゃんに言わないと。四年前の真実を、伝えないと。


そう思って楓ちゃんのところに行ったんだけど、四年ぶりに会った楓ちゃんは、あの頃よりずっと痩せていて……また心がズキリと痛んだ。


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