天使の梯子
俺を見て怯えたように逃げようとして転んでいるのを見て、俺がつけた心の傷の深さを知る。
それも当然か。俺がしたことを思えば楓ちゃんの態度は当然の反応だ。
暎仁が来る前にあの日の真実を話そうとした俺だったけど、暎仁が思いのほか早く現れてそれはできなかった。
暎仁は勘のいい男だ。きっと、俺に怯える楓ちゃんを見てなにかを察しただろう。俺に詰め寄らなかったのは、楓ちゃんと一刻も早くふたりになりたかったからだ。
その日の当直は、非常に忙しかった。
大体、急遽代わったりなんかするとこういうことになるんだ。
楓ちゃんが連れてきた患者は落ち着いていたものの、急変があるわ、他の急患が入るはで仮眠をとる暇もない。
夜勤の看護師さんにはなんで諏佐先生じゃないんですか~、とか言われるし、踏んだり蹴ったりだ。
そんな慌ただしい当直を終えた俺は、はーっとため息をついてソファに寝転んだ。