天使の梯子
愛の重さ
遠くで、食器のぶつかるような、そんな音がして意識が浮上した。
無意識に隣にいるはずの愛しい存在を探して、俺はハッと目を開いた。
たしかにいたはずの姿がなくて、どうしようもない不安に襲われる。
「……楓?」
また俺を置いてどこかに行ってしまったのだろうか。そんな不安を抱えたまま、俺は裸のままベッドを出た。
「楓?」
愛しい人の名前を呼んで、その姿を探してリビングに続くドアを開けると、鼻腔をくすぐるいい匂いと……キッチンに立つその姿を見つけてホッと息を吐く。
触れたくてたまらなくて、そこにいるってたしかめたくて裸のまま楓に近づく俺に気がついた楓が、驚いたように目を見開いて真っ赤になった。
「あ、暎仁くん。ふ、服着て」
真っ赤な顔で俺を寝室に追い出そうとする楓に、俺は不満さを全面に出した顔を向ける。