天使の梯子
「楓、今日一緒に病院行くんでしょ?」
「うん、こないだ搬送された患者さんのところにお見舞いに行く」
「じゃあ、俺と一緒に出ような」
そう言った俺にうなずいてから、楓が俺の顔をじーっと見つめている。
「なに? 楓、チューしてほしいの?」
なにが言いたいのかはだいたいわかってるけど、わざとからかうと楓の頬が赤く染まる。
「ち、違う。直哉さんのこと、もう怒ってない?」
怒ってない? そんなの、腸煮えくりかえっているに決まっている。
たしかにやらなかったのだろうけど、そのつもりでホテルに連れ込んだって時点でアウトだ。
あいつが、俺の楓に触れたってだけで腹が立つ。