天使の梯子
「お前は、もう気が済んだの?」
ひどい顔の直哉に聞かれて、眉間にシワが寄る。
全然済んでねぇし。でもまあ、こんな顔の直哉見たら思っていたよりは落ち着いている。
まあ、そんな顔になったのは半分くらいは俺のせいだけど。
「済んでねぇけど、楓にこんなのまで書かれて何回も念押しされたら、我慢するしかねぇな」
手の平に楓に書かれた『この手は人を助ける手です』の文字を見せると直哉がぷっと吹き出した。
「楓ちゃん、すげぇな。そんで、やっぱりいい子だわ。暎仁にはもったいない」
そう言う直哉にちょっとムッとするけど、たしかに楓はいい子だ。
かわいくて優しくて、こんな俺のすべてを包み込んでくれる、俺が初めて愛した愛おしい女。
「昔は暎仁みたいなのがなんで楓ちゃんなのかな~って思ってたけど。今はなんとなくわかる。暎仁は楓ちゃんじゃなきゃ、ダメだもんな」
そう言った直哉が真顔になって、俺に視線を向ける。