天使の梯子
「楓から聞きたい」
はっきりと言いきった諏佐さんが私の腕を掴んで、強引に立たせる。
「じゃあな、直哉。また来週」
「おい、瑛仁!」
そのまま私の肩を抱いて歩き出す諏佐さんは、直哉さんに呼ばれても立ち止まらなかった。
「あの、諏佐さん……」
諏佐さんに引っ張られるように歩きながら戸惑ってそう呼ぶ私に、諏佐さんは眉間にシワを寄せてチラッと視線を向けるけどなにも喋ってはくれない。
バッグを取られてる以上、逃げ出すことも出来ないしどうしよう。
バッグには携帯も財布も、諸々の身分証明書も家の鍵も入っている。
それがないと家にも帰れないから、どうにかして返してもらわないと困る。
病院の裏口から出て駐車場に向かって歩いて、諏佐さんはポケットから車の鍵を出して鍵を開ける。
それから車のドアを開けて、ようやく私のことを見て口を開いた。