天使の梯子
いつも余裕で、私ばっかりあたふたしていて、それを見てこの人は楽しそうに笑っていた。
私が黙っていなくなったことだけが、この人にとって理解出来ないことだったのかもしれない。
窓の外を流れる景色を眺めながら、そんなことを思う。
辛くて、悲しくて、苦しくて、それを必死に隠してこの人の前で笑ってた。
あの日眠るこの人に告げたさよならに、この人はいつ気づいたのだろうか。
「楓、一応聞くけどさ」
その声にはっとすると、車はどこかの駐車場に止まっていた。
窓の外に向けていた顔を諏佐さんのほうに向けると、思いのほか近くに顔があって驚いて身体を引いてしまう。