天使の梯子
「い、いません、から。離してっ」
その答えに満足したのか、ニヤリと笑った諏佐さんがやっと私を離して、車から降りる。
呆然としている私を車から降ろし、さっきみたいに肩を抱かれて強引に引っ張られる。
バッグ、車に置いたままだし。本気で絶望的な気分になりながらエレベーターの中に引きずり込まれる。
というか、ここ。まだここに住んでたんだ。
四年前までは何回も来たことのあるここは、諏佐さんの住んでいるマンションだ。
「す、諏佐さん、私、帰りたいんですが」
ダメ元で言ってみるけど、諏佐さんにジロリと見下ろされて小さくなる。
「ダメに決まってるでしょ。逃がさないよ」
ああ、もう……本当になんでこんなことになったんだろう。私は看護師として人命救助をしただけたのに。
やっぱりあの朝の占いを無視したのが良くなかったんだろうか。
諏佐さんが家の鍵を開けて、私をそのまま中に押し込むと玄関のドアに押し付けられる。