天使の梯子
だって、もう私にはそんな風に呼ぶ資格はない。
「だって私たち、もう……別れてるじゃないですか」
恋人でもない人を名前で呼ぶのも、変な気がする。それこそ諏佐さんに新しい彼女ができていたら失礼だ。
そう思ったのだけれど、諏佐さんの顔は険しくなる一方で私の顎を掴む手に力がこもる。
「俺が……」
そう呟いた諏佐さんが、皮肉めいた笑みを浮かべて顔を近づけてくる。
「まだ別れてるって、思ってなかったらどうする?」
吐息が触れそうなほど間近に迫った顔に、逃げ出したいけどそれは諏佐さんが許してくれない。
「そんな、だって四年も経ってるのに」
視線だけ逸らした私の唇に、ふっと笑った諏佐さんの吐息がかかった。