天使の梯子
「キス、やめてください。もうそういう関係じゃないって言ってるじゃないですか」
「だって、別れたいって聞いてないし」
悪びれもしない態度の諏佐さんに、段々腹が立ってくる。
「だから、さっき言おうとしました」
睨みつける私を無表情な顔でじっと見下ろしてから、頬をでられる。
「楓、痩せたね」
切なげに眉を寄せた諏佐さんが、押さえつけていた私の腕を掴んで部屋の中に入る。
「す、諏佐さ。ほんとに私……」
帰りたい、と呟く私に諏佐さんは眉を寄せたままふっと笑った。
「意地でも名前で呼ばないつもり? 昔は素直だったのに。まあ、でもこれが本来の楓なのかな」
腕を引っ張る諏佐さんが向かおうとしてる場所がどこなのかに気づいて、私は足を踏ん張った。
あの頃と変わっていないなら、あの場所は……。
ふるふると首を横に振る私に「察しがいいな」、と諏佐さんが呟く。
ずるずると私を引きずった諏佐さんがその部屋の扉を開けた。
扉を開けた先はやっぱり寝室で……必死で後退りしようとする私を諏佐さんが有無を言わせずに強引に引っ張ってベッドに押し倒される。