天使の梯子
「わっ、ちょっと、あんた大丈夫か!?」
その声にハッと振り返ると、人が倒れていて、たまたま通りかかったであろう男の人が声をかけていた。
どうしたんだろうと思わず走り寄って声をかける。
「どうしました?」
倒れた人に声をかけていた人が、走り寄った私を見てホッとした顔を見せる。
動揺しているんだろう、年配の男の人の瞳が揺れる。
「よ、よくわかんねぇんだけど。前を歩いてたこの人が、急に倒れて……」
私は倒れている人に視線を向けた。
スーツを着たその人は、胸を押さえたままの体勢で倒れてる。その顔は苦痛に歪んでいた。
急性の心筋梗塞かもしれないし、なにか心臓の持病を持っているのかもしれない。
「私、看護師です。申し訳ないんですが、救急車を呼んでもらえますか」
私の指示に、その男の人はうなずいてすぐに動いてくれた。