天使の梯子

倒れている人の呼吸を確認すると、弱くてあまりいい状態ではない。


手首に指を当てて脈を確認すると、触診では触れなかった。


気道確保のために、顔を上に向かせ嘔吐してもいいように横に向ける。


それから心臓マッサージを開始した。


救急車を呼ぶように頼んだ男の人が戻ってきて心配そうな顔で大丈夫か、と聞いてくるけど今のところはなんとも言えない。


心臓マッサージを続けていると、遠くから救急車のサイレンが聞こえてきてホッとする。


でも、心臓マッサージをやめるわけにはいかない。救急隊が到着するまでは続けなきゃ。


そして救急隊が到着して、慌ただしく搬送の準備を始める。


「CPA(心肺停止)だ。アンビュー出して、あとAED!」


救急隊が来ればあとはもう、病院に搬送してもらったほうがいいから私に出来るのはここまでだ。


「ご家族のかたですか?」


「いえ、通りかかった者です」


救命士さんに聞かれて首を横に振りながら答えると、救急車を呼んでくれた男性が救急隊に叫ぶ。


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