天使の梯子

そして私の寝てるうちに逃げ出すという計画は、あっという間に消えてしまった。それに、人質のバッグもまだ車の中だ。


「お、おはようございます」


逃げ出すことを考えていたことをごまかすように素直にそう返す私を、諏佐さんはぎゅっと抱きしめる。

「俺に抱かれた次の日に見せる、その照れた顔、かわいくてすごく好きだったな。昨日、ごめんね。久しぶりに楓に触れたら我慢きかなくなっちゃって。年甲斐もなく無茶した。身体、大丈夫?」


耳元で囁かれて、昨夜さんざんされた記憶が甦って顔が熱くなる。


久しぶりだったからなのか、下半身に違和感はあるけど大丈夫は大丈夫だ。


そんなことよりあんなことをされたほうが問題だと思うんだけど。まずそっちを謝ってほしい。


「それに楓、やっぱり男いないね。すごいきつかっ……」


そこまで言われて慌てて諏佐さんの口を塞ぐ。なにを言おうとしてるんだ、この人は。


「は、恥ずかしいこと言わないでください」


真っ赤な顔で諏佐さんの口を塞いだ私を見て、諏佐さんは楽しそうに目を細める。


いたたまれなくなって、とりあえず服を着ようとベッドのまわりを見渡す。


……おかしい、諏佐さんの服はあるのに私の服が見当たらない。


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