天使の梯子
「ダメ!」
ふるふると首を横に振る私に、諏佐さんは怖い顔のまま宥めるように頭を撫でる。
「楓、いい子だから離して。こいつになにをされたか分かってんの? 同意だったわけないし。楓が俺以外に足開くわけない」
な、なんかすごく恥ずかしいこと言われた気がするけど今はそれどころじゃない。
このままじゃ諏佐さんが殺人犯になってしまう。
「す、諏佐さんの手は、人を助ける手なんだから。医者のくせに殺すとか、そんなこと言わないでください」
私のその言葉に、諏佐さんの動きがピタッと止まって表情が緩む。
「楓、それはずるい」
それから私のほうを向いて、ぎゅうっと抱きしめてくる。
顔を見ると、まだ険しいけど悪魔みたいな顔はしていなくてホッとする。