天使の梯子

良かった、殺人犯にはならずに済みそう。まだ激しい怒りに包まれてる身体を抱きしめると、諏佐さんは大きく息を吐いた。


「直哉、お前もう帰れ」


「え、いや、でも……」


「帰れって。そこにいられると、ぶち切れそうなんだよ。そんなことをして楓に嫌われたくないから、頼むから帰ってくれ」


諏佐さんの怒りを含んだ震える声を聞いて、直哉さんは立ち上がった。


「わかった、帰るよ。でも、どうしてもこれだけは言わせて」


少し息を吐いてから、直哉さんは諏佐さんを抱きしめている私の顔を見る。


「俺、楓ちゃんとやってないから。最初はそのつもりでホテルに連れこんだんだけど。暎仁くん、暎仁くんて……親友の名前ばっかり呼ぶ子とさすがに俺もやれなかった。だから、やってないよ」


それを聞いて、私は信じられない気持ちで直哉さんを見る。


だってあの時、この人は……。


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