天使の梯子

「え? 連れこんだ? だって浅井さん、誘ったのは私だって……」


あれは嘘だったの? 直哉さんを見ると、直哉さんは気まずそうな顔で視線を揺らした。


「それも嘘。俺は、ただ……暎仁が悔しがるところが見たくて。暎仁がひとりの女にそんなに執着するの初めて見たから。俺がそれを奪ったらどうなるんだろうって、なんか……魔が差したっていうか」


あの日の真実を語る直哉さんを見る諏佐さんの顔を見て、ビクッとする。


また、魔王みたいな顔してる。


話している直哉さんは気づいてないみたいだけど、ほ、本当に早く帰ったほうがいいんじゃないだろうか。


「まさか、そこまで楓ちゃんが思いつめちゃうとは思ってなくて。ほんとに悪かっ……」


「やっぱり、もう一発殴っとくか」


「きゃあっ!」


諏佐さんが抱きしめる私を振り払って、思わず悲鳴が漏れる。


そして二発目のパンチが、直哉さんの左頬に炸裂した。


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