天使の梯子

「来週は当直に行く。でも、そのときお前が無事で済むかは楓次第だな」


え、私次第って……直哉さんの命は私にかかってるっていうこと? そんなのずるいと思うんだけど。


そう言った諏佐さんに、直哉さんは少し笑った。


「……昨日搬送されてきた患者さん、助かったよ。楓ちゃんに感謝してたから。よかったらお見舞い来てあげて、暎仁と」


頬を押さえてニコッと笑って出て行った直哉さんを見送って、呟かずにはいられなかった。


「あれは……かなり腫れるでしょうね」


そんなところを見てしまうのは、職業病かもしれない。だけどあれは、相当腫れると思う。


「当然だ。思いっきり殴ったからな。俺の手も痛い」


その言葉にはっとして諏佐さんの手を見ると、たしかに赤くなっている。




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