天使の梯子
「赤くなってますね。冷やしたほうがいいと思いますけど。アイスノンとかありますか?」
その手に触れると、諏佐さんは私の指に赤くなった指を絡ませる。
「いいよ、そんなの。それより、楓が強情でなかなか口を割らないから仕方なくあいつの口から聞いたけど。楓の口から聞きたいって思ってるのには変わりはないんだけど。俺はいつまで、その他人行儀な呼び方と敬語に耐えないといけないの?」
ビクッとして諏佐さんを見上げると、真剣な目で私を見下ろしてる。
「楓は、本当に直哉とのことがあったから、俺の前から消えたの? 本当にそれだけ?」
あのことを知ったら、この人はどう思うんだろう。
私が四年前にこの人の前を去った本当の理由を知ったら、私を責めるだろうか。
でも、そうだったんだ。あのときのことは、私は直哉さんとなにもなかった。
じゃあ、あの子は……。