天使の梯子
本当はもっと会いたい、いろんな話をしたい、いろんな話を聞きたい。
だけど、会うたびに疲れた顔をしている暎仁くんにそんなことを言えるわけもなくて。
会って身体を重ねるだけの関係に不安を抱きながらも、私はただ黙って彼を受け入れていた。
疲れた顔をしている暎仁くんに、私のことはいいからゆっくり休んでと、そう言うこともできない自分も嫌で……私が彼女でいいのかな、とそんなことを考えて真剣に悩んでいた。
「いいな、暎仁は。楓ちゃんみたいな彼女がいて。いいな、暎仁は……」
どこかいつもと違う様子の直哉さんに気づかず、目を伏せて私はお酒を口に含んだ。
そんな私に気づいたのか、浅井さんがにっこりと笑顔を向けてくる。
「もう本当に楓ちゃんはいじらしいね。今日はとことん飲んじゃえ。俺も付き合うからさ」
そう言われて、やっぱり寂しかった私はすすめられるままにお酒を飲んだ。