天使の梯子
どのくらい飲んだのか分からないけど、多分、あの日が人生で一番のお酒を飲んだ日だ。
そこからぷつりと記憶がなくなって、目覚めたときには裸でベッドの上にいて、隣には同じように裸の直哉さんが寝ていた。
驚いて固まる私に、直哉さんはいつもみたいに優しい笑顔で笑いかけてきた。
「言っとくけど、誘ってきたのは楓ちゃんだからね。そんなに暎仁としてなかったの?」
直哉さんの言葉に真っ青になって震える私に、浅井さんは少し迷うように視線をさ迷わせてから言った。
「大丈夫だよ。暎仁には内緒にしとくし。だから楓ちゃんも、内緒にしててね」
暎仁くんを失いたくなかった私は、直哉さんのその言葉にうなずくしかなかった。
秘密というのは、意外に人にストレスを与えるものだと、心理学の本で読んだことがある。
私は暎仁くんの前でなるべく普通にしていたけれど、強い罪悪感で押し潰されそうになっていた。
それでも暎仁くんに会うことをやめられない自分に呆れて
、また苦しくなる。