天使の梯子
「ごめ、ごめんね……。弱いお母さんで、ごめん」
女性は、新しい命が自分のお腹に宿っているとわかったときからもう母親になるのだと聞いたことがある。
それは本当で、私はそのときにもう母親になっていた。
産みたい、絶対に。
誰の子であろうと、私のところに来てくれたこの子を守りたい。
この子を殺すことなんて出来ない、私が守らなきゃ。
だから、大好きなあの人とサヨナラしなければいけない。
そう決めた私の決意は固かった。
直哉さんの子供かもしれないこの子のことで、暎仁くんに迷惑をかけるわけにはいかない。
すべてを黙って暎仁くんに身を委ねられるほど、私は図々しくもなれなかった。
そう決めてからの私の行動は、迷ってグズグズしていたのが嘘のように早かった。