天使の梯子
病院に行って正常な妊娠を確認して、引っ越し先を決め、病院に退職届けを出し、あとは携帯を解約して新しいものにすれば……あの人との関係は終わる。
すべての準備が終わった頃、暎仁くんから連絡が入った。
久しぶりに鳴ったその電話に、出るか迷ったけど……結局、私はその電話に出た。
『もしもし、楓? 明日少し時間できそうなんだけど。会える?』
大好きなその声に、涙が出そうになって。私はそれを必死にこらえた。
ここで泣いて、暎仁くんに不信の種を残すわけにはいかない。
「うん、会えるけど。ごめんね、あの日だからそういうことはできないけど。暎仁くんの顔が見たい」
身体を重ねることはできないけれど、最後に、あなたの顔が見たい。
神様、私の最後のわがままを許してください。