天使の梯子

疲れた顔。髪を切りに行く暇もないんだろう、伸びた髪をうるさそうにかきあげている。


今日は、いつも言いたくて言えないことを、やりたくて出来なかったことをやるって決めてきた。


だから……。


「暎仁くんこそ、目の下にクマができてるよ。少し顔見に来ただけだから寝て?」


暎仁くんの顔に手を伸ばして目の下のクマに触れる私に、暎仁くんは少し不満げな顔をする。


「久しぶりに会ったのに、楓はそれでいいの?」


その言葉に私は笑顔でうなずいた。


「いつも思ってたもん。ゆっくりさせてあげたいって」


本当にいつもそう思ってた。言えなかったけど。


たまにしか会えないから、少しでも私を見てほしくて言えなかった。


だけど今日は、最後だから。したいけど私のわがままで出来なかったことをしたい。


不満そうな顔で私を見ていた暎仁くんが私が譲る気がないと悟ったのか、ため息をつく。


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