天使の梯子
十九歳からの五年間、色々なことがあったけど喧嘩をしたことはなかった。
私はいつも本音を隠して、暎仁くんに笑っていた。
もっと会いたかった、もっと触れてほしかった。
だけどそれ以上に、私はあなたを支えたかった。
傍に、いたかったから。嫌われたくなかったから。面倒くさいと、思われたくなかったから。
まさかこんな形で、離れることになるとは思わなかったけど。
「さよなら、暎仁くん。ごめんなさい」
あなたのことが、好きでした。心の底から、大好きでした。
涙は、出なかった。
不安で不安で仕方がなかったけど、心の支えは、お腹の子だけだった。
なのに……。