天使の梯子

「今回は、残念ですが……」


先生のその言葉を聞いても、今度は涙は出なかった。


その前の一週間で泣きつくしたからなのか、私は意外と冷静だった。


やっぱりダメだったんだと、納得できたからなのかもしれない。


「見えますか? 赤ちゃん、袋の中にいないでしょう。赤ちゃんてね、心臓が止まるとお母さんにとって不要なものになるからね、自分で溶けちゃうの。お母さんのためにね」
私のために?


それを聞いたら、やっぱり我慢できなくて涙があふれてきた。


不要なんかじゃなかったよ。あなたが、私の心の支えだった。


産まれてきてほしかった、産みたかった。


あなたに会いたかったよ、だからいなくならないで。


どんなに強くそう願っても、画面に映っているのは空っぽの袋だけだ。



< 77 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop