天使の梯子

「大丈夫? ごめんね、辛いのに。今後のことなんだけど……」


「はい、大丈夫です」


診察を終えて、看護師さんと個室で今後の説明をされる。


「今日、ひとりで来てる? 旦那さんとかは……」


その言葉に、ぐっと言葉に詰まった。そんな人、私にはもういない。


私からその手を離してしまった。


「夫は、いません。……いないんです」


「……そう。うちは基本的に手術をするんだけど。手術のときは、誰かに付き添ってもらわなきゃいけないんだけど。大丈夫?」


いろんな患者さんがいるからだろう。その人は何も聞かなかった。


それがそのときの私には、すごくありがたかった。


「はい、大丈夫です」


それから手術の日程を決めて、私は地元の保育園からの付き合いの親友・藤彩乃に電話をした。


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