天使の梯子
『……え? なんで、いつの間にそんなことになってるのよ』
すべてを話すと彩乃は戸惑った声を出した。そりゃそうだろうなと思って苦笑いする。
私だって、彩乃にこんなこと言われたらこういう反応をする。
「ごめん。すごく、迷惑かけるんだけど。手術の日、仕事休めないかな? 彩乃に付き添ってほしいんだ」
『それは……休むわよ。親友のためだもの。だけど、彼氏にちゃんと話さなくて……本当にいいの?』
「もう彼氏じゃないもの……」
私の言葉に、彩乃がため息をつく。
『楓はなにも悪くないのに。なんでよ、なんでそうなるのよ』
涙声になる彩乃の声を聞いて、そうだろうかと思う。
私は本当になにも悪くなかったのだろうか。妊娠しているとわかったときに、どうしようと思った。
ひとりで育てると決めてからも、毎日不安で仕方がなかった。