天使の梯子

「か、看護師さん? バッグ落ちましたよ」


救急隊の人の声にハッとした時には、私のバッグは会いたくなくて、だけど会いたくてたまらなかったその人に拾われていた。


「協力してくれた看護師さん、ね。状況聞きたいからこっちに来てくれる?」


私を一瞥してから、その人は私のバッグを持ったまま背を向ける。


「あ、じゃあ待ってますよ」


断ったのに、まだ送っていってくれるつもりらしい救急隊の人の言葉にうなずいてしまいたくなった。


そうしたら、この場から逃げ出せるだろうか。


すがるように救急隊の人を見上げる私に、その人はなぜか頬を赤らめた。


「いいよ、帰って」


なかなか動かないでいる私に痺れを切らしたのか、戻ってきたその人が棘がある声を救急隊の人に向ける。


それから私の肩を強引に引き寄せた。


「この子と俺、知り合いだから。積もる話もあるし。ね、楓」


至近距離で顔を覗きこまれて、その瞳に背筋がゾクリとする。


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