天使の梯子
暎仁くんを、信じて話すこともできなかった。
嫌われたくなかった、軽蔑されたくなかった、私の中にはそれしかなかった。
結局、私は自分の都合ばかりだ。子供のことを、私は考えてあげられていたのだろうか。
「私が悪いんだよ。こんなお母さんのところに、赤ちゃん来たくなかったんだよ」
赤ちゃんがうまく育たなかった、遺伝子の問題だった、お母さんに非はない。
とてもそうは思えなくて、自分が情けなくなって涙がこぼれた。
『そんなことない、絶対にそれはない。楓みたいな優しい子、私他に知らないもん』
彩乃の言葉を、そのときの私は素直に受け止めることができなかった。
「そんなことないよ、自分のことばかりだもの」
『そんなことある。絶対ある。きっと、いつかその子戻ってくると思う。そんな気がする』
彩乃の優しい言葉に泣きながら笑って、それはないだろうなと思う。
だって私、暎仁くん以外の男の人を好きになれそうもない。
だからきっともう、あの子は戻ってきてはくれない。二度と、戻ってくることはない。