天使の梯子
驚いて目を見開く私を見て、少し笑ってくれたその目に、じわりと涙が溜まっていく。
「もう、楓に全部見せようって思うのに。やっぱりカッコつけたくなるんだよな。惚れた弱味かな」
苦笑いを浮かべた諏佐さんの目から、涙がこぼれ落ちた。
泣いている姿を見るのは、もちろん初めてだ。
「ごめん、楓。俺が、ちゃんとしてなかったから……ひとりでそんな辛い思いをさせて、ごめん。楓、ごめんな」
呆気にとられて、泣いている諏佐さんを見ている私を、諏佐さんが抱きしめる。
「俺、ずっと楓に甘えてたんだ。楓は優しくて、ドタキャンしたって文句のひとつも言わないし。俺の仕事を理解してくれてるって、そう思ってた」
そうだったよ。だって、私は諏佐さんの一番の理解者でいたかったんだもん。
医師として一生懸命働く諏佐さんのことが、好きだったから。