天使の梯子
努力していることを知っていたから、そんなあなたを支えたいと思っていた。
「好きって、言ったこともなかった。言わなくてもわかってるだろうって、勝手に思ってたんだ。でも、言わなきゃ分かんなかったよな」
諏佐さんが、私の頬を包み込んでコツンと額をくっつける。
「好きだよ、楓。あのときの合コンで初めて会ったときから、楓のことが好きだ。あの日、隣に座ったのも偶然じゃない。他の男にとられたくなかった。髪型も楓の好みにしたし、とにかく楓を落としたくて必死だった」
初めて聞くその告白に、胸が高鳴って間近にある諏佐さんの瞳を見返す。吸い込まれそうなほど真っ黒な瞳に、目を丸くした私が映っている。
「付き合ってからも、楓に嫌われたくなくて。カッコつけて、本音を隠してた。付き合ってって言ってOKもらったときは心の中でガッツポーズした。初めて二人で出掛ける前の晩は、ドキドキして眠れなかった。初めてキスしたときは、楓の唇の感触を一晩中思い返してた。楓の初めてをもらったときは、うれしくて泣きそうだった」
諏佐さんは出会った頃の昔の話をどんどんしてくれる。あの時はこうだった、ああだったと。
そこには私の知らなかった諏佐さんが、たくさんいた。