天使の梯子
「そうだよな。あんなんじゃ、頼れなかったよな。本当に、ごめん。こんなの、言い訳にしかならないのはわかってる。あの頃は本当に忙しくて、余裕がなくて、楓がそんなふうになってることも気づけなかった」
ぎゅうっと抱きしめられて、あの頃より諏佐さんの腕に安心している自分に気づく。それはきっと、彼の気持ちがわかったからなのだろう。
「直哉さんとのことがなければ、言ってたと思いますけど……多分」
それはそれで、忙しい諏佐さんに負担をかけたくないとか、そんなことで悩んだかもしれない。でもきっと素直に喜べたし、言えていたと思う。
「……やっぱりもう一発、二発くらい殴っとけばよかった」
「ダ、ダメ」
私が慌ててそう言うと、諏佐さんが苦笑いする。