天使の梯子
「え? 本当に大丈夫ですか?」
そんな私を見た救急隊の人が、心配そうに声をかけてくれる。
本当は逃げ出したい。大丈夫じゃないと言いたかったけど、看護師という立場がそれをさせてはくれなかった。
たしかに状況説明は必要だと思う。人命救助という責任が、私をギリギリの所でこの場にとどまらせる。
患者さんの命に関わることだから、自分の都合で逃げるわけには行かない。
「大丈夫です。知り合いなのは本当なので。ありがとうございます」
肩を抱く手を逃れて、なんとか笑顔を作って頭を下げると救急隊の人も納得してくれたみたいだ。
なぜだか残念そうな顔しているけど、気を取り直したみたいに爽やかな笑顔を向けてくれる。
「そうですか。では、本当にご協力ありがとうございました。じゃあ、先生、よろしくお願いします」
丁寧にお辞儀されて、微笑みながらお辞儀をすると尖った声で名前を呼ばれた。