天使の梯子
私がずっと、もし婚約指輪をもらえるならこれがいいなと、憧れていた指輪。
何気ない会話で、話したことがあったかもしれない。そんなことを、ずっと覚えててくれていたんだ。
「俺はずっと、本当に楓が好きだったよ。楓と結婚するつもりだった。だから、あのときに楓と再会して、運命だと思った。やっぱり俺の運命の相手は、楓だって」
目から、涙がこぼれる。
そんなことを考えていてくれていたなんて、知らなかった。私も諏佐さんのこと、なにも知らなかったんだ。怖がっているばかりで、知ろうともしていなかった。
あんなに忙しかったのに、ひとりでこの指輪を買いに行ってくれたの?
私のために、悩んでくれた?
いつも疲れた顔をして、目の下にクマを作っていた諏佐さんを思い出して涙が止まらない。
私たちは、どれだけすれ違っていたんだろう。お互い、同じ想いでいたのに。
たしかにこの再会は、運命だ。彼のことが愛おしくてたまらない。もうその手を離したくない。