天使の梯子

「ん、んっ、諏佐さ……」


そう呼ぶと、ピタッと動きを止めた諏佐さんが唇を離す。それからものすごく不満そうな顔で私を見て、唇をなでる。


「いつまでそんな他人行儀な呼びかたしてんだよ。直哉のことは名前で呼んで、俺は諏佐さんてなに? 名前で呼べよ。俺のことが好きなら、名前で呼んで」


そういえば諏佐さんて呼ぶと、何回も不機嫌な顔してたっけ。


出会った頃も諏佐さんて呼んでいたら、不機嫌な顔で名前で呼んでって怒られて怖かったな。


そんなことを思い出して、つい笑ってしまう。


「暎仁くん」


昔みたいに名前を呼んで、微笑む私を見て、なぜか暎仁くんは頬を赤らめる。


そんな顔も、初めて見た気がするな。


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