天使の梯子
「……天使の梯子」
そう呟いた私の視線を追って、暎仁くんも外を見た。
雲の切れ間から暖かさを感じる光が地上に降り注いで、私たちを照らしてくれる。
「……綺麗だな。天使の梯子っていうのか」
あの雲の上に、私たちの天使はいるのだろうか。やっと前に進んだ私たちを見て、「待ちくたびれたよ」って、笑っているかもしれない。
「うん。四年前の手術の日の朝も、同じ空を見たの」
ポロリと涙がこぼれた。その空を見て、すごく優しい気持ちになって私は微笑む。
「あの子は、天使だった」
窓の外に広がる美しい光景に、目を奪われながらそう呟く。ほんの少しの間、私の元に来てくれたあの子は、天使だった。きっと戻ってくる。暎仁くんが言ったみたいに……また、私たちの元へ。
「……楓」
そんな私を、暎仁さんが抱きしめてくれる。
それから私の左手を掴んで、薬指に四年越しのエンゲージリングをはめてくれた。