キミは僕に好きとは言わない
肌を撫でる風がとても優しい。
周りにはスイレンが浮かぶ池。
もしかして、めちゃくちゃいい雰囲気なんじゃない?
さっきまでうるさかったはずの桃矢はなぜか大人しいし、訪れた沈黙に緊張が走る。
「あの、萩原先輩……?」
1分にも満たない沈黙に耐え切れず、わたしが先に口を開いた。
緊張しているのはバレバレだと思う。
だって、絶対顔赤いよ………。
そんなわたしを見透かして、先輩がにこりと笑った。
「俺、なずなちゃんのこと………」
ーーードンッ!
「言うな!!」
「わっ!?」
言葉の先を聞く前の、ほんの一瞬。
あと少しというところだったのに、その瞬間を邪魔したのは、やはり桃矢だった。