キミは僕に好きとは言わない
「なぁ、俺を選べよ」
「離してっ……!」
わたしがそう言えたのは、先輩から随分と離された後だった。
強引に引かれていた腕を振りほどき、桃矢を睨みつける。
「せっかくいい雰囲気だったのに、桃矢のせいで台無し」
また得意の心配性?
いくら心配だからって、全部に口を挟んでいいわけじゃない。
わたしが先輩と何をしようと、どうなろうと、桃矢には関係ないんだもの。
「邪魔しないでよヘタレくせに! 」
目の前でガツンと言ってやった。
何度言っても聞き入れてくれないだろうけど、さすがに言わないと気が済まない。
そろそろ本気で怒ったっていいんだ。
先輩との仲を邪魔されるのが1番嫌だもの。
「…………」
桃矢は何も言わなかった。
泣きそうになってるわけじゃない。わたしから視線を逸らして、前髪で顔を隠している。