キミは僕に好きとは言わない

一瞬、何が起こっているのかわからなかった。

でも、すぐに理解した。


桃矢に……キスされてるんだって。


ーーードンッ！


「な、なにすんの……！？」


空いていた片方の手で、なんとか桃矢の体を押しのけた。

すぐに唇を擦ったけど、キスをした事実も、感触だって消えてくれない。


うそ……初めてだったのに……。



普通なら、ここで泣くんだ。

ファーストキスを奪われてショックだし、わたしだって泣きたいよ。


けれど桃矢は、わたしに泣く暇さえも与えてくれない。

追い打ちを掛けるように、再び真剣な顔で言った。



「好きだ」



……え？


「なずなが好きだから、俺と付き合え」