キミは僕に好きとは言わない


変だな。


外に出たのに、なんでまだ桃矢のことを考えているんだろう。

思い出の場所でもなんでもないのに、おかしいよね。


これじゃあまるで、先輩に会えないのが寂しいんじゃなくて、桃矢に会えないのが寂しいみたいじゃん。



…………って、あれ?


ドクンと胸の奥が揺れた。


……寂しい?桃矢に会えなくて、寂しいって思ってるの?


桃矢が側にいないからつまらないんじゃない。


本当は、寂しかったんだ。


わたしは先輩に会えないよりも、桃矢に会えない方がよっぽど辛いらしい。

ずるいよこんなの。卑怯だよ。



「会いたいのは荻原先輩なのに」


「俺がなんだって?」


そのとき、突然後ろから声がした。


ビクリと肩が震えて弾かれるように振り向くと、


「せ、先輩!?」


そこには荻原先輩が立っていた。




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