キミは僕に好きとは言わない
「キス、してもいい? 」
「いやー、まさかこんなところでなずなちゃんに会うなんて驚いたよ」
「わ、わたしもです……!」
先輩とお花屋さんで会った後、なぜか2人で近くの公園に来ていた。
小さなベンチに並んで座り、当たり障りのない会話を続けている。
先輩が言うには、家の手伝いで近所のお花屋さんを周っている途中だったらしい。
それで、たまたま店の前に立っていたわたしを見つけて、声を掛けたんだとか。
せっかくの夏休みなのに、先輩は真面目だね。
「なずなちゃんが1人のいるのって珍しいよね。桃矢くんと喧嘩でもした?」
ふいに先輩が聞いてきた。
「あ……えっと……」
すぐに言葉は出せなかった。
だって、桃矢がいないのはフラワーガーデンで起こったことが原因だもん。
告白されて、ファーストキスまで奪われて。
わたしがどんな想いで先輩の元に戻ったか、先輩は知らない。