キミは僕に好きとは言わない


……そうだ。

桃矢といろいろあったから忘れてたけど、あのときの言葉を最後まで聞いていない。

先輩のとこに戻っても何も言わなかったから、たいした話じゃないんだと決めつけていたけど……。


「なにか、大切な話だったんですか?」


恐る恐る口を開いた。

先輩はこくりと頷いてから、何も言わずにわたしを見つめてる。

あまりにも真っ直ぐ見てくるから、ドクドクと心臓が激しく揺れた。


「桃矢くんのいないところで言うのは、反則だと思うけど……言わせてほしいんだ」


今度はわたしが頷いた。

静かな時が流れる公園に先輩と2人きり。


少しの静寂を過ぎた後、先輩が言う。

心臓の音がうるさいせいで、聞き逃したらどうしようかと思ったけど、心配はいらなかった。


はっきり聞こえた。

大好きな、萩原先輩の声が。


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