キミは僕に好きとは言わない
「ぺんぺん草ちゃんって呼ばれないように気をつけなよ〜?」
「ちょっ、ぺんぺん草って言わないで!」
まったく………蘭ったら酷いんだから。
ニヤニヤと憎らしい笑顔を浮かべる蘭に腹を立てつつ、自分の弱点を再確認してしまった。
わたしの名前である「なずな」の由来はもちろんあの春の七草の1つでもある「ナズナ」の花からきている。
親から貰った名前に文句をつけるわけじゃないけど別名が「ぺんぺん草」なのはどうにかしてほしい。
「ぺんぺん」っていうのは三味線を弾くときに鳴る音で、
花の下に付いている果実の形が三味線の撥(バチ)に似ていることから「ぺんぺん草」って呼ばれるようになったらしいけど…………。
わたしには迷惑な話だ。
ぺんぺん草って言われるとなんだかバカにされてるような気になる。
しかも雑草だし全然可愛くない。
だから何かと蘭にふざけて呼ばれることが多い。
わたしも桃矢とか蘭みたいに可愛い花の名前だったらよかったのになぁ。
「ごめんごめん。でも行くでしょ?」
「行く!」
人生初めての合コンだし、こんなことでへこんでなんかいられないよね!
ついにわたしたちも幼なじみ離れするときが来たのかもしれない。