キミは僕に好きとは言わない


ーーー『絶対俺のこと、好きだって言わせてやる』


頭の中で何度もリフレインする桃矢の言葉。

いったいどこでそんなセリフを覚えてきたのかは知らないけど、先輩に告白された時よりドキドキしてしまった自分が嫌。


甘い言葉を言われるのが好きなわけじゃないのに。

相手が誰だっていいわけじゃないのに。


「言うか、バカ……」


しばらく会ってなかったのに、なんで急に部屋に来たの?

聞く隙すら与えてくれないなんて、桃矢は自分勝手すぎるんだ。


バカ。桃矢のバカ。


わたしが好きなのは萩原先輩だもん。桃矢は恋愛対象外のヘタレ幼なじみ。

だから、好きになんてなるわけない。


自分勝手に重ねた言い訳は、誰かに届くはずもなく心の中へと溶けていく。

ぎゅっと、胸が苦しくなる理由もわからないまま、ベッドに顔を伏せて目を閉じた。




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