キミは僕に好きとは言わない
「わたしは短い方が似合うと思うんだけどなぁ……」
嫌がる桃矢に構わず、また前髪に触れる。
ちょうど同じくらいの目線まで腰を落として見つめると、
「な、なんですか……」
桃矢は照れ臭そうに視線を落とした。
こいつが地味男に見えるのは、普段のだらしない格好とダサい髪型のせいだ。
蓮先輩には叶わずとも、ある程度顔は普通なんだし、もう少し身なりに気を使えばいいのに。
まぁ、今更どうでもいいんだけど。
「なんでもない。そんなことより、寝癖直し終わったよ」
前髪からそっと手を離して、気の抜けた顔をする桃矢の頭をポンッと叩いた。
「あ、ありがとうございます……」
「まったく、早く自分でできるようになってよね」
わたしの幼なじみは今日も手が掛かる。