キミは僕に好きとは言わない
「あーあ、疲れた」と、肩を回して時計を見た。
朝のホームルームまで時間あるし、蘭が来るまで暇だなぁ。
夏休み明けということもあってか、教室にはわたしたちを含めて4人しかいない。
久しぶりに早起きしたから眠いや。
「ふぁ〜……」
女子力の欠片も感じない大きなあくびをしながら、重くなる瞼をこする。
桃矢の面倒も見たことだし、自分の席で寝よう。
そう思い、席に戻ろうと一歩足を進めたら…………。
ーーーパシッ
「なずなちゃん」
なぜか桃矢に腕を掴まれた。
驚いた心臓が嫌な音を立てて揺れている。
「な、なに?」
振り向いた先に見えるのは、前髪の奥に隠された真剣な眼差し。
いつものヘタレスイッチが切り替わったんだと、一瞬にして理解した。