キミは僕に好きとは言わない


そうだ……桃矢はわたしの気持ちなんかお構いなしに迫る、強引な男だった。


つい最近はヘタレだったからすっかり油断していた。

ここ学校だし……教室なのに……。


何をされるんだろうと怯えていると、桃矢がゆっくりと口を開いた。


「別に、なにもできなくたって構いません」

「え?」

「1人でなんでもできるようになったら、なずなちゃんは僕の側から離れてしまうでしょう?」


彼の口から出た言葉は、なんとも予想外なものだった。


てっきり以前のように強引になるのかと思えば、ヘタレ全開の弱々しい声。

別に迫られたいわけじゃないけど、ちょっと拍子抜けしちゃった。


「わたしは桃矢のお世話係じゃないんだよ?1人で全部できるようになっても、ずっと一緒だって」


あんなにキャラが変わっても、やっぱり桃矢は桃矢だね。

いつもの女々しさは全然変わってないじゃん。


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