キミは僕に好きとは言わない


「それに、ヘタレな桃矢を1人にしたら危なっかしいもん」

「なずなちゃんよりは落ち着いてると思いますよ」


「うるさい!」

「わっ!?」


調子に乗って笑う桃矢に、1発デコピンをくらわせてやった。

額を押さえて「なにするんですか〜!」と、怒る桃矢から顔を背ける。


せっかく答えてあげたのに、なんでわたしがバカにされるのさ。

ヘタレに心配されるなんて人生終わりだよ。


口を尖らせて文句を言い続ける桃矢がアホらしくて、思わず口元が緩む。

なんだか少しほっとした。


ずっと気まずかったけど、話せばいつも通りに接することができたから。


「なずなちゃん」


再び名前を呼ばれて顔を向ければ、桃矢がにこりと笑っていた。

首を傾げて言葉を待つと、じっとわたしを見つめながら、


「ありがとうございます」


と、また笑う。


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